「ヤラズ」「ヤレナイ」でも稼げる賞金の仕組みとは?
「この馬、ずっと2着、3着続きだなぁ…」って思ったことありませんか?それは明確な「ヤラズ」の典型だと私は考えています。「八百長」とは違う「ヤラズ」の実態について、賞金の仕組みから解き明かしていきたいと思います。
1.競馬に「八百長」はあるのか?
スポーツで話題になる「八百長」、競馬でも噂はされています。私は少なくともJRAが取り仕切る「中央競馬」においては「八百長」はないのではないか、と考えています。
それは「メリットが少なく、手間がかかりすぎる」からです。八百長をしようと思ったら、馬主・調教師・騎手が全員結託しないとできないですし、出走馬の能力や力関係を正確に把握できる人間がいるとも思えないですからね。
ただ意図的に「ヤラズ」はあり得るかと思います。理由としては①ケガからの復帰明けや馬の体調によって無理をさせたくない、②下手に1着になって「出世」するよりも今のクラスの方が稼げる、という2つの理由があるからでしょう。
①はわかるけど、②の「出世」しない方が稼げるってどういうこと?と思いますので、JRAの賞金の仕組みを基に解説していきたいと思います。
2.競走馬が貰える賞金の仕組みは?
2-1.賞金の内訳
レースごとに交付される賞金は実は着順ごとの賞金だけではありません。詳細について興味のある方はJRAのホームページに詳しい解説ページがありますので、そちらをご覧ください。
レースの賞金は主に下記4種類があり、何着でも手当が貰えて、プラス8着以内であれば更に賞金が加算される、というところがポイントです。ちなみに特別出走手当は高齢馬や1着馬との着差が大きくなると減額されます。むやみに出走しても赤字になってしまいますね。
2.出走奨励金:6着から8着までの馬に支払われる賞金(重賞の場合は10着まで)
3.特別出走手当:全競走馬に支払われる賞金(レース内容や結果に応じて増減あり)
4.その他:距離や生産国等に応じて加算される賞金
※競馬新聞に記載のある「収得賞金」は1着になったとき(重賞は2着まで)に加算される金額のこと
2-2.賞金シミュレーターで実際に計算してみよう!
JRAのホームページには馬主向けの賞金をシミュレータがあります。これを使って実際にシミュレーションしてみましょう!
例えば国内で生産された馬が2歳新馬戦で1着になると、下記の計算の通り合計892万7千円の賞金が交付されます。
例1:2歳新馬戦1着 ※内国産馬
1.本賞金:700万円
2.出走奨励金:0万円
3.特別出走手当:42万7千円
4.その他(内国産馬奨励賞):150万円
合計:892万7千円
余談ですが2018年3月4日の第55回弥生賞(GⅡ)ではデビュー戦が重賞の馬(ヘヴィータンク)が出走し話題になりました。結果は当然というか最下位の10着でしたが、実は「新馬戦を勝ちあがる見込みがないから、少しでも稼ぐために出走させたのでは?」とも言われました。重賞レースだと10着でも出走奨励金が貰える仕組みになっています。新馬戦で5着だと賞金額は合計127万7千円になりますが、このレースに出走することでそれよりも稼いだわけですからね(笑)。実際に計算してみると下記の通りになります。
例2:2018年3月4日(日)第55回報知杯弥生賞(GⅡ) 初出走馬・ヘヴィータンク(10着)が稼いだ賞金額は?
1.本賞金:0万円
2.出走奨励金:108万円
3.特別出走手当:43万1千円
4.その他:0万円
合計:151万1千円
3.下級条件で掲示板 VS 上級条件で2桁着順、どっちが稼げる?
最初にお話したずっと2着・3着続きの馬はいったいどのくらい稼いでいるのか?気になる方もいるかと思いますので、例として500万下条件で5着と1000万下条件で10着の場合で比較してみましょう。
条件を揃えるために4歳牡馬・内国産馬で芝2000mのレースに出走した場合で比較してみましょう。
500万下条件:5着
1.本賞金:75万円
2.出走奨励金:0万円
3.特別出走手当:46万8千円 ※距離による加算5万円含む
4.その他(内国産馬奨励賞):5万円
合計:126万8千円
1000万下条件:10着
1.本賞金:0万円
2.出走奨励金:0万円
3.特別出走手当:46万8千円 ※距離による加算5万円含む
4.その他(内国産馬奨励賞):0万円
合計:51万8千円
なんと70万円以上も500万下条件の方が稼げる結果となりました!もちろんこれは色々なレース条件がある中での1つの例にしか過ぎませんが、上級条件に無理に出世するよりも下級条件でそこそこの着順の方が長い目でみると稼げることが良く分かるかと思います。
4.まとめ
いかがでしたか?
競走馬もプロスポーツ選手である以上、いかに長く現役で賞金を稼ぐか、ということを重要視するのも当然と言えます。無理に出世させようと1着を狙って消耗するよりも、下級条件でそこそこの着順で長くレースを使えるようにするのも一つの戦略なのでしょう。上級条件になるほどレース展開が厳しくなり、それに伴って馬も消耗していくでしょう。さながら野球のピッチャーの肩のようですね(笑)。
競馬の賞金なんて競馬新聞に書いてあるなぁ、くらいで気にしたこともなかった方も、今後は「こいつは出世する気がないな」ということも考えながら予想するとまた違った楽しみ方ができるのではないでしょうか?
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